妄想です。
ある日コウモリは打ち捨てられていた鳥の卵を見つけます。
見よう見まねで営巣し、卵を抱いて温めて孵すのですが、
孵ったヒナはコウモリのことを好きではないのです。
コウモリは他の親鳥みたいにふかふかした羽根もなく、
だから自分の肌をびったり密着させてヒナを温めるのですが、
ヒナはそれが気持ち悪くてしょうがないのです。
巣の中も硬くてじっとり湿っていて居心地はよくありません。
あるときヒナの仲間の鳥が現れてヒナを連れて行こうとします。
コウモリは自分の子供を奪われるように感じて抵抗するのですが、
ヒナはコウモリより自分に似た鳥の方に懐いていて、
「鳥は鳥に育てられるのが一番だよ。コウモリの親なんてね」
と周りも声を揃えるばかりで、
ヒナを卵から孵したコウモリに味方する者はどこにもいません。
ずっと覆いかぶさるように卵とヒナを抱いていたコウモリは
自分の背がひどく曲がり猫背になっていることに気づくのでした。
巣の中で猫背で佇んでいるうちに急に自分の巣が憎らしくなってきて、
かぎ爪で巣材をはがし、穴を空け、そのみすぼらしい巣を壊すのでした。
コウモリ=スー先生
ヒナ=ハリー
仲間の鳥=シリウス
でも先生はいつまでも心の中に巣を持っているのです。
抱く対象がなにもない、からっぽの巣を。